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自己破産は、名前としては一般的ですが、正確には、
「財産を清算する事によって得られたお金を業者等に配当し、残った借金について支払を免除してもらう手続。」
です。
では実際にどのような方がどのような手順で行っていくのか具体例を交えながらご説明します。
司法書士の千野に債務整理の依頼をしたHさんは、沢山の業者から借金があり詳細は下の表のとおりでした。
業者名 | 利率 | 取引期間 | 借金額(円) | 毎月の返済額(円) |
I社 | 18% | 5年 | 500,000 | 15,000 |
J社 | 20% | 5年 | 500,000 | 20,000 |
K社 | 25% | 7年 | 700,000 | 30,000 |
L社 | 15% | 10年 | 1,500,000 | 35,000 |
M社 | 18% | 3年 | 400,000 | 12,000 |
N社 | 18% | 2年 | 300,000 | 10,000 |
合計 | 3,900,000 | 122,000 |
毎月の返済額が12万円を越えており、返済のために他社から借り入れをした上で返済をすることを繰り返しておりました。
利息制限法の上限利率(15〜20%)に利息を引き直した残高が下の表の通りです。
業者名 | 利率 | 取引期間 | 借金額(円) |
I社 | 18% | 5年 | 500,000 |
J社 | 20% | 5年 | 300,000 |
K社 | 25% | 7年 | 200,000 |
L社 | 15% | 10年 | 1,500,000 |
M社 | 18% | 3年 | 400,000 |
N社 | 18% | 2年 | 300,000 |
合計 | 3,200,000 |
引き直しが可能である業者はJ社とK社だけでしたが、取引期間もそれほど長くないためJ社は20万円、K社は50万円ほど減額しましたが、他社は、契約当初から利息制限法の上限利率内での契約でしたので引き直しは出来ませんでした。
仮に、任意整理による解決を検討すると、少なくとも元金を3〜5年で返済する必要があります。
その場合、毎月約5万7,000〜9万5,000円もの返済が必要になります。
Hさんの家計状況としては、お給料から毎月の生活費など差し引いて、どんなに切りつめて頑張っても毎月2万円を出すのが精一杯であったため、任意整理は選択肢から外しました。
次に、裁判所の手続である自己破産を選択すべきかどうかですが、
ポイントとして、
「不動産など目立った財産を所有しているか。」
「借金を作ってしまった原因はどのようなものであるか。」
この2点が自己破産を選択する上で非常に重要になってくる点です。
財産について
自己破産は原則、財産について清算を行います。競売をし売却代金を業者などの債権者へ配当をするのが原則ですが、財産であれば何でもかんでも競売にかけるかと言ったらそうではありません。
資産価値が20万円未満のものであれは原則競売は行いません(裁判所によって取扱が異なる場合があります)。加えて、所有資産の資産価値の合計が100万円未満であれば、同じく原則競売は行いません。
Hさんは不動産など目立った資産はなく、自動車くらいで、自動車の時価も20万円未満でした。
借金を作ってしまった原因
自己破産は、裁判所へ申立をして、裁判所で自己破産が認められる場合、「免責決定」という決定がされ、法律的に借金を支払う必要が無くなったことを意味しております。この様に強力な効果をもたらす一方、どんな方でも「免責決定」が認められてしまうのであれば、借金を作っても「借金するの面倒くさいから自己破産しよう。」となってしまい、借金を返済する方がいなくなってしまいます。
その様な弊害を防ぐために、借金を作った原因によっては自己破産は認めません!と自己破産を認めない要件をいくつか定めております。
例えば、
「借金を作ったのはパチンコ代が足りなくなったから。」
「ブランド品を購入するために借金をしてしまった。」
この様な方は、自己破産が認められない要件と定められております。
要件はいくつかあり、全ては説明しませんが、まとめますと、生活費や借金の返済のために借りたなど、生活していく上で仕方なく借りてしまった。借金をしなければ生活していかれなかったなど、やむを得ない状況であることが一つポイントとなってきます。
本題に戻り、Hさんは、借金をしたきっかけは、軽い気持ちで生活費の足しにと思って借りたがだんだんエスカレートしていき途中からは、毎月の返済が自分の給料を超えてしまい、借金をしなければ他の業者へ返済出来ない状況になってしまい、その後は、返済のために借入を繰り返すようになってしまいました。
Hさんは2つのポイントを踏まえ、自己破産の要件に当てはまっておりましたので、債務整理の方針を自己破産に決定しました。
見出しだけ見ると何の事やら分かりませんが、先ほどご説明しました、ポイントについて、
「ポイントに当てはまらない方は自己破産の申立が出来ないの??」
という疑問が出てきますが、まず、ポイント1の財産について。
上でご説明させていただいた財産以上所有している方が自己破産を申し立てた場合は、当然その財産については競売の対象となります。
ポイント2の借金を作った原因についても、借金のほとんどは生活費のためでほんの一部だけブランド品の購入に充ててしまったという方であれば、自己破産を申立をして場合によっては、認められる可能性もあります。
ここで、手続の違いが出てくるのですが、
競売にかけられるような財産が全くなく、借入をした原因も、収入が少ないことによる生活費の借入のような、明らかに問題がない場合、裁判所は、「同時廃止」という手続を行います(同時廃止事件と言います)。
この手続の特徴は、チェック機関が裁判所だけになり、手続にかかる期間も短い点です。
逆に、財産があり競売を行う必要がある、財産を隠している疑いがある、借入原因など簡単に問題ないと言えない、などの場合、裁判所は、「破産管財人」を選任し、破産管財人にも本人の状況など細かくチェックさせます(管財事件と言います)。
この手続の場合、裁判所に加え破産管財人もチェックに当たり、同時廃止に比べ期間も長くなります。
さらに、2つの手続の最も異なる点が、裁判所に提出する費用についてです。
同時廃止事件の場合、裁判所に提出する費用(予納金といいます)は約1万円に対し、
管財事件の場合は、破産管財人の報酬を負担する必要があります。その金額は事案によって異なりますが、最低でも22万円〜となっております。
したがいまして、同時廃止事件として手続を進められるのか、管財事件になってしまうのかは非常に重要ですので、債務整理の方針を自己破産に決定する際にはその当たりの見極めも重要になってきます。
それでは、自己破産の手続の流れをご説明します。
上の項目でご説明させていただきましたが、ご本人の借金額など詳細に検討した上で、当事務所で方針についてご提案させていただきます。
最終的な方針決定は、お客様ご自身のお考えに基づいて決定します。
自己破産の申立てを裁判所に行うには、お給料明細、預金通帳の写しなど、様々な書類が必要になります。
当事務所では、必要書類の収集について細かくご説明させていただきます。
裁判所へ申立を行った後は裁判所において内容を確認し、同時廃止事件か管財事件かによって金額が異なりますが、予納金を裁判所へ納付します。管財事件の場合は、予納金を納付後破産管財人が裁判所より選任されます。
破産者審問と言われる手続ですが、同時廃止事件の場合は、裁判所の裁判官と面談を行い、管財事件の場合は、裁判官と破産管財人と面談を行います。
面談の内容としては、今までの借入の経緯・現在の家計状況の確認・その他確認が必要な点などです。
面談期日は、裁判所が指定する日時での予約制となっております。
裁判所での面談後、手続が開始しますが、同時廃止事件の場合は破産手続が開始した段階で終了となりますので、開始と同時に破産手続が終了します(開始と終了が同時にくるため同時廃止と呼んでいます。)
管財事件の場合は、財産の清算が必要な場合は競売などの手続に入っていきます(管財事件の手続の詳細については省略します。)。
破産手続が開始した際、免責についての意見申述期間というものが定められます。これは、簡単に言うと、「債権者の方で、この方の破産手続について反対など意見があれば○月○日までに裁判所に対して行ってください。」と意見を述べることが出来る期間を定めます。同時廃止事件の場合、決定から2か月程度です。
今回は、意見申述期間に全く意見がなかったと仮定します。
特に、債権者などから意見がない場合、裁判所から最後の決定として、破産者の免責を認めるかどうかの決定が下ります。
ここで、免責を認められる決定が下りて初めて、借金の支払い義務が無くなります。
言い換えると、破産の開始だけでは借金の免除まではならないと言うことです。
この段階で初めて借金の支払い義務が無くなりました。
簡単ではありますが、以上が自己破産の流れとなります。
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