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近年、過払い金について、報道されたり、弁護士事務所・司法書士事務所が積極的にテレビCM・新聞広告など行なっていることから、「過払い金」という言葉自体は日常生活で目に触れる機会が増えたかと思います。
では、「過払い金」とは一体どういう意味なのか?
どうしてお金が戻ってくるのか?
そこまで詳しく理解されている方はなかなかいらっしゃらないのではと思いますので、その仕組みについてわかり易くご説明させて頂きます。
お金を借りる際の利息の利率に関して、上限の定めがあります。
「利息制限法」という法律です。
元金の金額が、 | 上限利率 |
10万円未満 | 20% |
10万円以上100万円未満 | 18% |
100万円以上 | 15% |
しかし、消費者金融業者などの契約利率をみてみると、「25%」「29.2%」など 上限をはるかに超えております。
何故でしょう?
消費者金融業者などは、「貸金業規制法」という別の法律の規定ががありまして、その中で、
「一定の要件を満たせば利息制限法の上限の利率を超えても良いですよ」
と書かれておりました。
その際の利息の上限は、「29.2%」と別の法律(出資法)で定められておりました。
したがって、消費者金融業者などは「29.2%」までは利息として契約しておりました。
しかし、借金の問題に積極的に取り組んでいた弁護士・司法書士などが、
「消費者金融業者は、『一定の要件』を満たしていないのでは??」
と主張を始め、裁判で争いになりました。
最終的に、最高裁判所は、
「一定の要件を満たしていない。」
と判断しました。
消費者金融業者などと取引を開始した時から、「一定の要件」満たしている場合、「29.2%」で貸して良いですよという規定であったため、最高裁判所で「一定の要件を満たしていない。」と判断された以上、言い換えれば、
「取引の最初から29.2%の利率では貸してはいけなかった。」
と判断したことになります。
そこで、疑問になるのが、
「今まで29.2%の利息で返済をしていたのに、その分はどうなってしまうの??」
と言う問題です。
それに関しては、ニュースや新聞などで一度は耳にしたことがあるかもしれませんが、
『グレーゾーン』
という問題です。
「今まで、29.2%の利率で返済をしていたのに、その分はどうなってしまうの?」
という疑問に対して、明確な回答はありませんでした。
「あれっ」、と思う方もいらっしゃると思いますが、
前の部分で説明させていただいた、『一定の要件』を違反していた場合の罰則などの規定が一切存在しなかったのです。 この点は『グレーゾーン金利問題』を説明する上で非常に重要な点です。
「罰則などの規定が無い以上は、利息制限法を適用しましょう。」
利息の上限に関する法律が、2つあり、明確な規定が無いために、どっちつかずとなっておりこの様な問題が発生しました。
『グレーゾーン』とは、利息制限法の上限利率(20%)から出資法の上限利率(29.2%)の間の利率での契約に関して、どちらが適用になるのかはっきりしていないことから『グレー』と言われておりましたが、 実際「29.2%では貸してはいけません。」と判断された際の、対処の方法も明確に規定されておりませんでしたので、その意味での『グレー』とも言えるのではないでしょうか。
では、実際の過払い金の仕組みについてご説明させていただきます。
よく、「過払い金は、払い過ぎた利息全額のこと。」
と思われている方がいらっしゃいます。
間違いではないですが、正確に説明しますと、
利率を利息制限法の上限利率に下げた上で、取引の初めから再計算し直し、利息制限法の上限利率による利息プラス借入をした元金全額を払った上でさらに払い続けたお金のこと。
と言うことですが、文章で書いたら何の事やらさっぱりですよね……
表で説明します。
Aさんは、50万円を平成18年12月1日に利息29.2%で借り、毎月の返済金額が1万3,000円でした。
その方の取引内容は、
取引日 | 借入額 | 返済額 | 利率 | 利息 | 元金返済額 | 残高 |
平成18年12月1日 | 500,000 | 29.2% | 500,000 | |||
平成19年1月1日 | 13,000 | 29.2% | 12,400 | 600 | 499,400 | |
2月1日 | 13,000 | 29.2% | 12,385 | 615 | 498,785 | |
3月1日 | 13,000 | 29.2% | 11,172 | 1,828 | 496,957 | |
4月1日 | 13,000 | 29.2% | 12,324 | 676 | 496,281 | |
(中略) | ||||||
平成24年12月1日 | 13,000 | 29.2% | 8,265 | 4,735 | 340,589 |
となり、平成24年12月1日現在の借金の残高は、34万589円です。
6年間も払い続けているにもかかわらず、借金が全然減っておりません。
実際、6年間の返済金額の合計が、93万6,000円と借金の2倍近く返済をしたにもかかわらず、借金の金額は、約16万円しか減っておりません。その分利息として、約78万円も支払をしていることになります。
この様な契約は以前は普通にありました。
しかし、業者は、利息制限法の上限利率までしか利息を取ることは出来ませんので、実際は18%(借金は50万円です。)ということになり、下の表の通りになります。
取引日 | 借入額 | 返済額 | 利率 | 利息 | 元金返済額 | 残高 |
平成18年12月1日 | 500,000 | 18% | 500,000 | |||
平成19年1月1日 | 13,000 | 18% | 7,643 | 5,357 | 494,643 | |
2月1日 | 13,000 | 18% | 7,561 | 5,439 | 489,204 | |
3月1日 | 13,000 | 18% | 6,755 | 6,245 | 482,959 | |
4月1日 | 13,000 | 18% | 7,383 | 5,617 | 477,342 | |
(中略) | ||||||
平成24年12月1日 | 13,000 | 18% | 0 | -13,000 | -185,023 |
まず、平成19年1月1日の返済に注目してください。
29.2%だと、利息は1万2,400円ですが、18%だと7,643円で、4,757円も差が出ます。
元金返済分については、29.2%だと、たったの600円ですが、18%だと、29.2%との差額分がそっくり元金の返済に回っており5,357円も元金を返済していることになります。
おどろきですよね〜。
たった一回の返済でもこれだけ残金が変わってくるのです。
次の返済分も同じように計算し直していきます。残金のみ比較したものが下の表です。
取引日 | 29.2%の残金 | 18%の残金 | 差額 |
平成18年12月1日 | 500,000 | 500,000 | 0 |
平成19年1月1日 | 499,400 | 494,643 | 4,757 |
2月1日 | 498,785 | 489,204 | 9,581 |
3月1日 | 496,957 | 482,959 | 13,998 |
4月1日 | 496,281 | 477,342 | 18,939 |
(中略) | |||
平成24年12月1日 | -185,023 | 340,589 | 525,612 |
差額を見ていただくと、返済を重ねるたびに大きくなってきますので、取引期間が長ければ長いほど、金額が変わってきます。
29.2%と18%のからくりについてはご理解いただけましたでしょうか??
それでは、本題の過払い金の仕組みについてご説明させていただきます。
29.2%から18%へ利息を直すと、残金が取引期間によって大幅に変わってくるお話しをさせていただきましたが、18%に直すと残金がどんどん下がっていくため、返済を続けているといつか残金がゼロになる時が来ます。
以下の表をご覧下さい。先ほどの取引の途中の計算書です。
取引日 | 借入額 | 返済額 | 利率 | 利息 | 元金返済分 | 残金 |
平成23年8月1日 | 13,000 | 18% | 534 | 12,466 | 22,489 | |
9月1日 | 13,000 | 18% | 343 | 12,657 | 9,832 | |
10月1日 | 13,000 | 18% | 145 | 12,855 | -3,023 | |
11月1日 | 13,000 | 18% | 0 | -13,000 | -16,023 |
平成23年10月1日の返済から残金が「−3,023円」とあり、マイナスになっております。
このマイナスが、「過払い金」になります。
したがって、11月1日以降の返済は、全て過払い金ということになります。
ここまで、お読みいただいた方であれば、すでに過払い金の仕組みについてご理解いただけたと思いますが、まとめますと、
「過払い金とは、利息制限法の上限利率(ここでは18%)の利息及び借りた元金の全額を支払ったにもかかわらず、払い続けた返済金。」
ということになります。
上の事例ですと、平成24年12月1日現在では、18万5,023円もの過払い金が発生していることになります。
29.2%では、残金が約34万円ですので、約53万円もの差額が生じております。
消費者金融など顧客にはこの事実を伝えておらず、29.2%のまま返済を続けさせている業者も存在します。
ここまで、お読みいただいた方は、仕組みについてご理解いただけたかもしれませんが、まだご存じない方は、過払い金が発生している可能性があるのに、業者の言いなりに返済を続けている可能性があります。
一般的には、6年以上18%を超える高利息で返済を続けていた場合に、過払い金が発生する状態にある可能性があります(取引内容によって発生しない場合もございますのでご注意下さい。)。
したがって、その様な状態でしたら一刻も早く、司法書士などの専門家へご相談されることをお勧めします。
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